|小型14ピンOCXOのご使用ガイド|

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14ピンタイプOCXOのご使用ガイド 及び 各特性について

 

 Microcrystal社/ DIL-14サイズの OCXOのご使用ガイドです。

 

 

(1) 接続回路 について

VCタイプ の回路接続例 抵抗外付けタイプ の回路接続例
DIL-14-OCXO接続回路-VC DIL-14-OCXO 接続回路 Rタイプ

※ より安定度を得るためにはVdd用電源 と VC用電源を別電源にすることが有効です。
※ VCタイプの場合は『20kΩ以上』の値のポテンショメータを用いて下さい。

※ 調整端子へポテンショメータを接続し周波数調整を行います。ポテンショメータ は多回転のものをお勧めします。
※抵抗外付けタイプの場合は『10kΩ』のポテンショメータを用いて下さい。それ以外の値の場合はセンター調整が出来なくなる場合があります。

なお、VCタイプの場合はポテンショメータを使わずに D/Aコンバーターにて調整する方法 もあります。若干部品点数が増えソフトウェアからの制御が必要になる部分はありますが、ポテンショメータ特有の摺り線の不安定要素がなくなるため安定した結果が得られます。

OCXOの周波数調整幅は 『±2.5ppm以上』 または 『±4.0ppm以上』 の規格になっています。
『±2.5ppm以上』 の場合は 幅で |5ppm| 以上、『±4.0ppm以上』 の場合は同じく幅で |8ppm| 以上になります。
【 5回転のポテンショメータの場合 】
 ・ 『±2.5ppm以上』 の場合は 1回転当り:1.0ppm以上
 ・ 『±4.0ppm以上』 の場合は 1回転当り:1.6ppm以上
【 10回転のポテンショメータの場合 】
 ・ 『±2.5ppm以上』 の場合は 1回転当り:0.5ppm以上
 ・ 『±4.0ppm以上』 の場合は 1回転当り:0.8ppm以上
となります。調整のし易さを考慮すると、10回転以上のものをお勧めします。

(2) OCXOの設置 について

OCXOの設置方法については以下の重要なポイントがありますのでご参考にされて下さい。

 

◆ ファンなどの風の影響を受けない場所に設置すること。
 風が当たる位置では周波数が不安定になりやすくなります。
 ( SMDタイプのOCXOではドラフトカバーオプション をご用意しています )

 

◆ある程度熱のこもる環境の方が安定度の観点からは望ましいのですが、OCXO自体が熱発する部品のため他の熱発する部品とは基板上で距離を置いて配置して下さい。マイクロクリスタルのDIL-14タイプOCXO単体で通電した場合のOCXOの表面温度はおよそ『40〜45℃前後』 になります。

 

◆ 取り付けの向きは問いませんが一旦取り付けた後は方向を変えると重力の影響で周波数がわずかに変動します( G-sensitivity。1*E-9レベルの値です)。

(3) 周波数調整 について

※ 各タイプでの 制御範囲 と 周波数センターの ターゲット値は以下になります。

タイプ +5.0Vdd
VCタイプ
+3.3Vdd
VCタイプ
+5.0Vdd
抵抗外付タイプ
+3.3Vdd
抵抗外付タイプ
制御範囲 制御電圧
+0.5V〜+5.0V
制御電圧
+0.0V〜+3.3V
外部可変抵抗
0Ω〜10kΩ
外部可変抵抗
0Ω〜10kΩ
センター
ターゲット値
+2.0V前後 +1.3V前後 2kΩ前後 2kΩ前後

※ OCXOには起動特性がありますので、周波数調整の際には起動後になるべく十分な時間をおいてから行うことをお勧めします。

(4) 周波数起動特性 について

◆以下に、実際に 『SCOCXOVT-AV5-10MHz』 での起動時の周波数変動を測定したデータの例を示します。

 

< 起動〜60秒 までの実測例 >
周波数軸/1目盛り:1*E-7

< 起動〜1時間までの実測例 > 
周波数軸/1目盛り:1*E-8

DIL-14 OCXOの起動特性のグラフ DIL-14 OCXOの起動特性のグラフ

 

OCXOは電源を入れてから安定状態に入るまでの時間があります。
時間が経てば経つほど 僥/t が小さくなり周波数が安定します。

 

長いスパンで見た場合には電源投入後から30日経過までとそれ以降で挙動は変わってきます。この挙動には個体差があり、比較的早く落ち着くものや長い時間がかかって落ち着くものもあります。この挙動には概ね再現性があり、一旦電源を落とし数日経過後に再度電源を投入すると高い確率で各個体ごとの前回と同じような挙動が現れます。

周波数調整の際には、求める周波数精度にもよりますが、ある程度の時間をかけて連続通電した後に調整することを推奨します。

 

(5) 消費電流について

・起動時の消費電流

 ※実際に『SCOCXOVT-AV5-10.000MHz』での起動時の消費電流の変動を測定したデータの例を示します。

起動〜60秒 までの実測例 起動〜1時間までの実測例
OCXO 消費電流のグラフ OCXO 消費電流のグラフ

 

こちらは常温時でのデータです。周囲温度により 『突入電流時間の長さ』 と 『定常時の消費電流』 が変わってきます。

 

・定常時の消費電流と周囲温度の関係

 ※ 定常時(起動の突入電流時間以降で落ち着いた状態)の消費電流は周囲温度に反比例します。
   低温側では電流が多くなり、高温側では電流は少なくなります。
   電源によってはこの電流値の変化により電源電圧が変動する場合がありますのでご留意下さい。
   (Vdd と同じ電源から VC電圧を抵抗分割している場合は影響を受けやすくなります)
  OCXOの消費電流と温度のグラフ

(6) 周波数経年変化 について

以下に実際に一年間の周波数変動を測定したデータを示します。

 

OCXOの長期安定度の実測グラフ

 

この測定を行ったサンプルでは電源投入後から15日目あたりまでの変動が大きく その後15日〜30日でやや動いた後に極めて安定した状態となりそれ以降は変動が小さくなります(ただし経年変化はゼロになる訳ではありません)。
この電源を投入してから 〜15日, 〜30日までの挙動は一旦電源を落とすと再度同じような挙動となります(瞬断などの場合は除く)。
OCXOの上手な使い方として 『一旦電源を投入した後は電源を落とさない 』ことが安定した周波数につながります。

(7) 周波数温度特性/ヒステリシス

OCXOの周波数温度特性・ヒステリシスの実測例を以下示します。
OCXOの温度ヒステリシスのグラフ

水晶発振器は繰り返し温度特性の測定を行うとわずかにヒステリシスが生じます。このヒステリシスは発振器の設計や種類によって異なりますが、OCXOの場合は恒温槽にて発振回路部分の温度はほぼ一定に保っていて内部の温度変化は少なく抑えられているため、内部の振動子の温度が周囲温度と同様に変化する温度補償型の発振器(TCXO)などに比べてヒステリシスが非常に優れています。

(8) 電源と位相ノイズの関係

・同じ測定サンプルでノイズの異なる電源を使用した場合の位相ノイズの差分
E3620A電源での測定結果 U80001A 電源での測定結果
OCXOの位相ノイズ OCXOの位相ノイズ

OCXO内部にレギュレーター回路などの電源回路は内蔵していますが、それでも位相ノイズは外部電源のノイズ特性の影響を受けます。左は低ノイズのリニア電源を使用した場合のデータです。右はややノイズの多めのスイッチング電源を使用した場合のデータです。使用したOCXOは同じサンプルです。この比較では10Hzオフセットの部分で 7dB近い差分が見られます。近傍は測定時の振動などでお影響を受ける可能性があるため繰り返し測定で確認しています。

 

※ その他、ご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせ下さい。

 

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