・水晶発振回路マッチング事例

       〜 一見同じに見えても実際には定数により異なる内容〜

 
 
・発振回路マッチングテストに用いたIC(マイコン) 及び水晶振動子

CMOSインバータを用いた水晶発振回路


 実際の水晶発振回路のマッチング内容について、未経験の方にも分かりやすい事例のためにマイコンのブレッドボードを
用いてマッチングテストを行いました。
テストの対象の水晶振動子は <HC-49U/S> , <HC-49U/S-SMD> を使用しました。

 
-  メーカー 型番等 
 対象のマイコンIC 国内マイコンメーカ モータ制御用マイコン
 水晶振動子 (A)  多摩デバイス  HC-49U/S-SMD 12.500MHz (CL=12pF 及びCL=16pF)
 水晶振動子 (B)  多摩デバイス  HC-49U/S-SMD 10.000MHz (CL=12pF 及びCL=16pF)
 水晶振動子 (C)  多摩デバイス  HC-49U/S-SMD 8.000MHz (CL=12pF 及びCL=16pF)

マイコンのデータシートの記載に外部水晶振動子の周波数範囲が 8MHz〜12.5MHzとなっていたので
今回は上下限と中間の周波数を選択しました。

また今回使用したマイコンのデータシート内には水晶発振回路に関する詳細の記述があまり無く、内部にフィードバック抵抗が
内蔵されているかどうかの記載が見つけられませんでした。今回使用した基板ではフィードバック抵抗の1MΩが実装されて
いましたが、データシートで確認出来ない場合は、このように外部で設けられるようにしておくと安心です。
(今回の場合は結果的には無くても問題無く動作しました)



・実際の発振回路マッチングテスト結果


マイコンの発振回路周辺部分のみの回路図です。上部の <EXTAL> <XTAL> はマイコンの水晶振動子の接続端子です。
マイコン内部の発振回路の詳しい記載はデータシートにはありませんでしたが、実際にはRf抵抗は内蔵されていているようです。

※ まずデフォルトの状態で電源を投入し発振状態を確認します。また振動子の両端での振幅を確認して実機でも電流の流れる
  方向を確認しておきます(上図の赤の
が電流の流れる方向でした )。

今回の基板では、ダンピング抵抗を入れるパターンは無かったので、そこは設定せずにテストを行いました。
テストの条件    
 電圧 +5.0Vdd 
 温度 室温にて 
 サンプル数 各1pc 


(A) 周波数: 12.500MHz でのテスト結果

テスト振動子の概要 
パッケージ HC-49U/S-SMD ( HC-49U/S でも同等) 
 周波数  12.500000MHz
 負荷容量  (1) 12pF  (2)16pF
 等価直列抵抗値  45Ω以下
 ドライブレベル  100μW Typ. (300μW Max.)

 (A1) HC-49U/S-SMD 12.500MHz/負荷容量 = 12pF の場合のテスト結果      
- C1 コンデンサ C2 コンデンサ 外部Rf 抵抗  周波数偏差 負性抵抗 ドライブレベル   判定
1 22pF 22pF 無し  -22.96ppm  1,350Ω以上  約 338μW
2 18pF 22pF 無し  +1.28ppm  1,530Ω以上  約 264μW
3 22pF 18pF 無し  -4.88ppm  1,585Ω以上  約 248μW
4 18pF 18pF 無し  +12.56ppm  1,752Ω以上  約 240μW

 ※ デフォルト(=1) でC1=C2=22pF が実装されていたので、そちらからスタートしました。
   デフォルトの状態ではやや周波数が低めに出ていて、またややドライブレベルが高めだったので
   少しコンデンサの値を下げました。2〜4の条件でより周波数のセンターが近くなっています。

  またドライブレベルも 2〜4の条件では 300μW以下と良い値になっています。
   (推奨値は50μW〜300μW程度 )

  負性抵抗は 1〜4 とも等価直列抵抗値の30〜38倍以上となっており、問題の無い値でした。
   (推奨値は等価直列抵抗値の5倍以上、アプリケーションによっては10倍以上)

 (A2) HC-49U/S-SMD 12.500MHz/負荷容量 = 16pF の場合のテスト結果      
- C1 コンデンサ C2 コンデンサ 外部Rf 抵抗  周波数偏差 負性抵抗 ドライブレベル    判定
1 27pF 27pF 無し +5.04ppm  981 Ω以上  約 427μW X
2 33pF 27pF 無し  -14.24ppm  833 Ω以上  約 429μW X
3 27pF 33pF 無し  -10.0ppm  826 Ω以上  約 496μW X
4 33pF 33pF 無し  -34.72ppm  674 Ω以上  約 650μW X

 ※ (A1) の負荷容量=12pF での結果から、IC及び基板での浮遊容量が約2〜2.5pF程度と予想されましたので
   負荷容量16pF では C1=C2=27pF でやや周波数が高めに出るもののちょうど良い値と予想して、そちらから
   テストを行いました。 1 では周波数はかなりセンターに近い値になりました。

   ドライブレベルがやや高い値になっています。 周波数を下げる方向で、2〜4のテストも行いましたが
   コンデンサ容量を追加するとドライブレベルの値が上がるため、いずれも推奨値の『50μW〜300μW』を
   超える値になっています。 4の値ではドライブレベルが高すぎる値になります。
   (推奨値は50μW〜300μW程度 )

   負性抵抗は 1〜4 とも等価直列抵抗値の14.9〜21.8倍以上となっており、問題の無い値でした。
    (推奨値は等価直列抵抗値の5倍以上、アプリケーションによっては10倍以上)


※A1(負荷容量=12pF), A2(負荷容量=16pF) のテスト結果から、このマイコンでは負荷容量=12pF、もしくはより低い
  負荷容量が適していると考えられます。


(B) 周波数: 10.000MHz でのテスト結果

テスト振動子の概要 
パッケージ HC-49U/S-SMD ( HC-49U/S でも同等) 
 周波数  10.000000MHz
 負荷容量  (1) 12pF  (2)16pF
 等価直列抵抗値  45Ω以下
 ドライブレベル  100μW Typ. (300μW Max.)

 (B1) HC-49U/S-SMD 10.000MHz/負荷容量 = 12pF の場合のテスト結果      
- C1 コンデンサ C2 コンデンサ 外部Rf 抵抗  周波数偏差 負性抵抗 ドライブレベル    判定
1 22pF 22pF 無し  -26.0ppm  2,062Ω以上  約 246μW
2 18pF 22pF 無し  -0.40ppm  2,386Ω以上  約 199μW
3 22pF 18pF 無し  -12.1ppm  2,385Ω以上  約 186μW
4 18pF 18pF 無し  +13.4ppm  2,777Ω以上  約 178μW

 ※ (A) 12.500MHz のテスト結果とほぼ同じ結果となっています。
   周波数2〜4の条件でより周波数のセンターが近くなっています。

  またドライブレベルは12.500MHzの時よりも下がり 178μw〜246μWと良い値になっています。
   (推奨値は50μW〜300μW程度 )

  負性抵抗は 1〜4 とも等価直列抵抗値の45.8〜38倍以上となっており、問題の無い値でした。
   (推奨値は等価直列抵抗値の5倍以上、アプリケーションによっては10倍以上)
   ( 同じマイコンであれば、振動子の周波数が下がると負性抵抗は増加します)

 (B2) HC-49U/S-SMD 10.000MHz/負荷容量 = 16pF の場合のテスト結果      
- C1 コンデンサ C2 コンデンサ 外部Rf 抵抗  周波数偏差 負性抵抗 ドライブレベル    判定
1 27pF 27pF 無し  -0.80ppm  1,390Ω以上  約 330μW
2 33pF 27pF 無し  -12.7ppm  1,291Ω以上  約 331μW
3 27pF 33pF 無し  -9.40ppm 1,292Ω以上  約 388μW
4 33pF 33pF 無し  -28.8ppm  1,104Ω以上  約 457μW X

※ (A) 12.500MHz のテスト結果とほぼ同じ結果となっています。
  周波数センターは 1のC1=C2=27pF でほど良い値となっています。

  またドライブレベルは12.500MHzの時よりは若干下がりましたが330μw〜457μWとやや高い値になっています。
   (推奨値は50μW〜300μW程度 )

  負性抵抗は 1〜4 とも等価直列抵抗値の24.5〜30.8倍以上となっており、問題の無い値でした。
   (推奨値は等価直列抵抗値の5倍以上、アプリケーションによっては10倍以上)
   ( 同じマイコンであれば、振動子の周波数が下がると負性抵抗は増加します)


※12.500MHzの場合と同様に、 10MHzでも負荷容量=12pF またはそれ以下の値の方が適していると考えられます。


(C) 周波数: 8.000MHz でのテスト結果

テスト振動子の概要 
パッケージ HC-49U/S-SMD ( HC-49U/S でも同等) 
 周波数  8.000000MHz
 負荷容量  (1) 12pF  (2)16pF
 等価直列抵抗値  50Ω以下
 ドライブレベル  100μW Typ. (300μW Max.)

 (C1) HC-49U/S-SMD 8.000MHz/負荷容量 = 12pF の場合のテスト結果      
- C1 コンデンサ C2 コンデンサ 外部Rf 抵抗  周波数偏差 負性抵抗 ドライブレベル   判定
1 22pF 22pF 無し  -23.37ppm 3,244Ω以上  約 248μW
2 18pF 22pF 無し -0.87ppm 3,764Ω以上  約 202μW
3 22pF 18pF 無し  -5.50ppm 3,668Ω以上  約 191μW
4 18pF 18pF 無し  +13.62ppm 4,373Ω以上  約 180μW

※ (A) 12.500MHz 及び(B)10.000MHz のテスト結果とほぼ同じ結果となっています。
   周波数2〜4の条件でより周波数のセンターが近くなっています。

  またドライブレベルは12.500MHzの時よりも下がり 180μw〜248μWと良い値になっています。
   (推奨値は50μW〜300μW程度 )

  負性抵抗は 1〜4 とも等価直列抵抗値の64.88〜87.46倍以上となっており、問題の無い値でした。
   (推奨値は等価直列抵抗値の5倍以上、アプリケーションによっては10倍以上)
   ( 同じマイコンであれば、振動子の周波数が下がると負性抵抗は増加します)


 (C2) HC-49U/S-SMD 8.000MHz/負荷容量 = 16pF の場合のテスト結果      
- C1 コンデンサ C2 コンデンサ 外部Rf 抵抗  周波数偏差 負性抵抗 ドライブレベル  判定
1 27pF 27pF 無し  +0.62ppm  2,338Ω以上  約 335μW
2 33pF 27pF 無し  -12.12ppm  1,992Ω以上  約 339μW
3 27pF 33pF 無し  -9.12ppm 2,011Ω以上  約 378μW
4 33pF 33pF 無し  -25.37ppm  1,701Ω以上  約 449μW X

※ (A) 12.500MHz 及び(B)10.000MHz のテスト結果とほぼ同じ結果となっています。
  周波数センターは 1のC1=C2=27pF でほど良い値となっています。

  またドライブレベルは12.500MHzの時よりは若干下がりましたが335μw〜449μWとやや高い値になっています。
   (推奨値は50μW〜300μW程度 )

  負性抵抗は 1〜4 とも等価直列抵抗値の34.02〜46.76倍以上となっており、問題の無い値でした。
   (推奨値は等価直列抵抗値の5倍以上、アプリケーションによっては10倍以上)
   ( 同じマイコンであれば、振動子の周波数が下がると負性抵抗は増加します)


※12.500MHz 及び 10.000MHz の場合と同様に 8MHzでも負荷容量=12pF またはそれ以下の値の方が
  より適していると考えられます。



・テスト結果について

 発振回路のマッチングの結果は、

  ・発振回路のアンプ素子(マイコン内の発振回路)の特性
  ・水晶振動子の周波数及び特性(抵抗値、端子間容量、直列容量など)、
  ・周辺素子(コンデンサ、抵抗)

 により条件が大きく変わってきます。

 今回はあえて複数の周波数でテストし、かつ負荷容量も変えてテストして傾向の違いが分かりやすい
 結果をご提示できたのではと思います。

  ・一般に、周波数が下がると負性抵抗は増加します。
  ・外付けコンデンサの値を上げると負性抵抗は減少し、ドライブレベルは増加し、周波数は下がります。

 また今回のマイコンでは負性抵抗が非常に大きな値を得ることが出来ていましたが、現実にはここまでの負性抵抗が
 取れないことは良くあります(周波数が高かったり、アンプの周波数特性が低いなどにより)。
 等価直列抵抗値の数倍程度のことは非常に良くありますので注意が必要です。
 量産時にはかならず事前にチェックされることをお勧めします。

注意事項
・テスト結果はあくまでテストに使用した基板でのテスト結果です。個体差ばらつきは必ずあると考えられますのであくまで参考結果としてご理解ください。
・水晶振動子は同じ周波数でも型番の違いにより各パラメーター(抵抗値、端子間容量、直列容量、インダクタンス特性)が異なり、そのため回路マッチングの結果も異なってきます。
評価を行う場合には実際に使用される基板と水晶振動子の組み合わせで評価をされて下さい。
・発振回路のアンプ素子(マイコン内の発振回路)の特性が大きく負性抵抗などの結果に影響します。マイコンの機種によって上記結果と全く異なる結果になりますので、必ず使用されるマイコンにてご確認をされて下さい。
 ・HC-49U/S 及び HC-49U/S-SMD は比較的大きなパッケージサイズですが、その分、等価直列抵抗値が小さいというメリットがあります。より小さなパッケージの振動子では等価直列抵抗値が大きくなるのと、高いドライブレベルに対する耐性が下がり(高ドライブの際に抵抗値が大きくなってしまったり異常発振してしまう) 大きさにより特性に差があります。


  なお量産前提の場合は、弊社で回路マッチング調査のサービスを行っています。
 (対象は弊社の水晶振動子のみ、他社様の製品のマッチング評価は行っておりません)
 ご相談は弊社の営業窓口までお気軽にお問い合わせ下さい。


(注) このページ内のデータ数値はあくまで目安になるものとしての値を提示しています。このデータをもとに
   弊社の関与しないところで設計等された場合に何らかのトラブルが発生したとしても一切の責任は
   負いかねますので予めご了解ください。



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