|高安定ディスクリートタイプOCXOガイド|

SCカット超高安定タイプOCXOの使い方ガイド 及び特性について

(1) 接続回路 について

高安定・ディスクリートタイプOCXOには通常『Vref端子』があり 『VC端子』に制御電圧を与えるための基準となる高安定のDC電圧出力があります。このVref電圧とメカニカルポテンショ、D/Aコンバータ、Digitalポテンショなどを用いて微調整を行います。この時、ポテンショやD/Aコンバーターの温度特性がそのままOCXOの出力周波数に影響を与えることにご注意下さい。
周波数調整幅が経年変化に対して余裕がある場合は、温度特性のよい固定抵抗との組み合わせでポテンショやD/Aコンバータの温度特性の影響を軽減する方法もあります。

※ 周波数調整回路接続例
※ポテンショメータは『20kΩ』以上の値のものをご使用下さい。1回転のものよりも多回転のものの方が調整がしやすくなります。より細かい調整が出来るようにする場合には『20kΩ』のポテンショと『2kΩ』のポテンショを組み合わせて使うなどの方法もあります。

※ バイパスコンデンサはディスクリートタイプOCXOの場合は内蔵しているためあまり必要ではありません。
  入れる場合は周波数に応じて0.1〜0.01μFのものを使用します。
  OCXO自体が発熱するため、安全を見て耐温度の高いもの(+125℃品など)をご使用ください。

(2) OCXOの設置 について

◆ OCXOはファンなどの風の影響を受けない場所に設置することが基本です。
 ファンの回転速度の変化の際に周波数の変動が大きくなる場合があります。

 

◆ OCXO自体が熱発する部品のため他の熱発する部品とは基板上で距離を置いて配置して下さい。
  高精度SCカットタイプOCXO単体で通電した場合のOCXOの表面温度はおよそ以下の値です。
    ・ 『STP3091LF-10.000MHz』 ・・・・・ +45〜+50℃程度
    ・ 『STP3287ALF-10.000MHz』 ・・・・・ +50〜+55℃程度
   (STP3287ALF-10MHzは動作温度上限が高いので内部のヒーター温度も高いため表面温度も高くなります )

 

◆ 取り付けの向きは問いませんが、一旦取り付けた後は方向を変えると重力の影響で周波数が変動します。
  ( G-sensitivity。 1*E-9 レベルの変動 )

 

 

(3) 周波数起動特性 について

※以下に実際に 『STP3091LF-10MHz』 での起動時の周波数変動を測定したデータの例を示します。
  ( 周波数軸/1目盛り:1*E-9/室温での測定 )

起動〜1時間の例 @ 起動〜1時間の例 A(別サンプル)

図のデータの通り OCXOは電源を入れてから安定状態に入るまでの時間があります。時間が経てば経つほど 僥/t が小さくなり周波数が安定します。『STP3091LF-10.000MHz』の場合は概ね 5分程度で 5〜10E-9 程度までに落ち着き、その後徐々に周波数が収束しています。挙動には個体差がありますが再現性があります。一旦電源を落として数日経過後に再度電源を投入すると高い確率で各個体ごとの前回と同じような挙動が現れます。周波数調整の際にはある程度連続通電した後に調整するようにされて下さい。

 

(4) 起動時の消費電流について

以下に実際に 『STP3091LF-10.000MHz』 での起動時の消費電流の変動を測定したデータの例を示します。
( 起動〜1時間までの実測例 /1目盛:50mA/室温環境にて)

起動〜1時間までの実測例@ 起動〜1時間までの実測例A(別サンプル)

上記の起動時の消費電流のデータは常温時でのデータです。室温環境の場合は5分足らずで定常時電流に落ち着きます。消費電流は周囲温度環境によって変わります。
(低温時では多くなり高温時では少なくなります)

 

 

 

(5)周波数経時変化 について

『STP3091LF-10.000MHz』 の起動から11日間の周波数変動を測定したデータを示します。

このシリーズは電源投入後に安定域に入るまでの時間が短く優れています。長期安定度の規格では『電源投入後:14日の値を基準として』となっていますが実測では概ね2〜3日で『1E-10以下/1日』 の規格に達しています。
STP3091LF-10.000MHz』 は概ねこの傾向です。

※ OCXOには起動特性がありますので、電源投入後、少なくても24時間以上、より安定するには 1〜2週間経過するまで待つのがベターです。また一度電源オフにすると再度起動特性の影響が出ますので、一度電源を入れたらその後は電源を切らない運用をお勧めします。

(6) 周波数の再現性について

『STP3091LF-10MHz』の再現性試験を行った際のデータです。電源を投入から30分/1時間/3時間/6時間/24時間経過後にそれぞれ周波数測定を行います。その後24時間電源をオフとした後に再度電源を投入して再度同様に周波数測定を行い、これを繰り返し行います。2つのサンプルでのデータを以下に示します。グラフの周波数の単位は <1*E-9> です。

再現性テスト@ 再現性テストA(別サンプル)

仕様値は 『±5E-9以下』ですが、実力値は概ね 『±1E-9以内』となっており非常に良好です。


※電源のオンオフがある機器の場合には、この再現性も加味して設計をご検討下さい。

 

(7) 周波数温度特性

『STP3091LF-10.000MHz』 の周波数温度特性の実測例を以下示します。
こちらは同じサンプルで2回温度測定を行ったデータの比較です。

1回目測定( -20〜+70℃ ) 2回目測定 ( -20〜+70℃ )繰り返し

グラフ内のピンク色のラインが周波数です。紺色 のラインは恒温槽の設定温度を示しています。
『+25℃→+70℃→0℃→-20℃→+25℃』 の温度テーブルでの測定です。
『STP3091FL-10.000MHz』は内部にデジタル補正は無しで『5E-10以内』の優れた温度特性となっています。

 

 

(8) 位相ノイズ特性について

『STP3091LF-10.000MHz』の特徴としてデジタル補正回路技術は用いていないため
優れた近傍位相ノイズ特性になります。
自己補正機能のある機種の場合は近傍位相ノイズに影響があります。

 

 ※ その他、ご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせ下さい。